●二〇周年記念としてパーティの代わりに、矢野智企画『やくざ勧進帳』の公演を行う。

1971年(昭和四六年)

灰皿/阿部良 -Ryo Abe-

二度めに寄った時、灰皿が四つ出てきた。
初めての日に、タバコの灰を撒き散らす僕の癖を見て覚えたらしいのだが、皮肉なのか親切なのかは別として、その反応の早さに驚いたのを覚えている。当時一階のチーフはヤマちゃん、二階がアイちゃんだったと思うが、あれが一階だったのか二階だったのかは忘れた。
その悪癖は今もなおらず、そこここで叱られつづけている。

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小澤京子 -Kyoko Ozawa-

鉄の輪をひっぱって、おそるおそる重い扉をあけて、入って行ったのが、もう三〇年位前かしら?当時はまだお避けの味すら分からなかった私には、中の情景に、たじたじびっくりしたもの。年月は早いものです。五〇周年おめでとうございます。厳しい時代の五〇年は本当に立派ですばらしいものですね。まだ当時の面影を残し、あの壁の“つた”は時代の移り変わりの歴史を物語るよう。青々として嬉しいかぎりです。

どん底は自分たちだけの楽な空間を作ってくれる所。その回りの小さな風景も皆楽しい。いろいろな仲間とのめぐり逢い。時には「え!」と思う人が目の前のカウンターに居たりして・・・。ともすれば心の余裕がなくなっている現代人に心のゆとりを取り戻してくれるような何よりも干渉されない。ふんいきはとても好きな所。マスター相川さんの気さくさ、ひょうひょうとした、人間的親しみに安心して通えるお店。私にとってもこのふしぎなお店はいい仲間と語り合い笑ったり、おこったり、なげいたりして、私の人生の過程の節目を作ったよう。いつ迄もいつ迄も時代をみつめて、存在していって下さいね。いずれ可愛いおばあちゃんになって、どん底のおいしいピザを食べながらカウンターに座ってる私を想像して・・・。

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