1973年(昭和四八年)

どん底の思い出/恩田徹 -Toru Onda-

どん底五〇周年おめでとうございます。
学生時代より通ったどん底、私の青春時代の思い出はどん底と共に過ぎていったような気がします。二階の混雑した暖炉の前毎夜友と飲み交わす日々、明日のお金が無くてもどん底の酒は活力でした。

五〇歳を向えられたどん底には沢山の人達の人生がいっぱいつまっているような気がします。
私も今は五〇歳後半になり飲食業を経営しておりますがどん底は私の店作りのバイブルです。いろいろな事を教えてもらったどん底の魅力を少しでも店に取り入れられたらと日頃考えております。

どん底がこれからも永遠につづき、いつまでもかわらない店でいてほしいと願っています。
矢野さんに相川さんスタッフの皆様健康に留意されいつまでもみんなのどん底を守りつづけて下さい。

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私とどん底/十朱幸代 -Yukiyo Toake-

私の公園デビューならぬ、夜の街デビューは此処、新宿の“どん底”でした。
まだ成人にはチョッと前の私は勿論PTA付き、今は亡き本郷淳やら佐藤英夫、大森暁美大山のぶ代のお兄様お姉様に連れてっていただいて、皆の小難しいお話も大人のジョークも、解ったり解らなかったりだけど、眼をランランとして耳を大きくして、出来る丈おとなしく控えておりました。ソフトドリンクを前にして(でも本当はアルコールかなりいけたんですけれど・・・)。

そう、思い出した!

ある日、恋をして、どん底の片隅で約束をしたっけ・・・「私達、もしも別れてしまう事があったとしても、毎年この日に、思い出したら飲みに来てみましょうよ、お互いに。」
でも、あれから一度もその日に訪ねた事はない・・・。

それにしても、もうこの頃は夜の街を出歩くより、我が家でテレビ相手にいっぱいの方が気楽!なんて云ってるんですから、ホントに情ない始末。

どん底も五〇周年でまだまだ頑張るらしいから、私も思い切って出かけてみるかな。暑い夏が終って、やっと秋の風が通る、あの路地に・・・。

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竹越浩一 -Kouichi Takegoshi-

まるで、揺りカゴの様などん底のイスで、愚かな夢を見ながら酔いに身をまかせ惰眠をむさぼっていた。

残り火のペチカでイモを焼きつまみにしていたのは店にバレバレだったかのかな。

朝迄、店にいてそれからまた従業員のみんなと飲み屋をハシゴした。
いつ寝て、いつ起きて、いつ仕事をしていたのか。
今考えると不思議な気がする。

そんな青春を送らせてくれた『どん底』に、これからもボクは通い続けることだろう。

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